輸入中古車400勝

中古車ジャーナリストの雑文一式。

輸入中古車=美魔女説

※2011年11月25日執筆

 

輸入中古車ジャーナリスト兼カリスマ無職として自分は日々、さまざまな研究に余念がない。昨日は『FLASH』『BREAK Max』を精読することで男性下流層の消費動向を研究し、さらにはさまざまの女性誌を駅前書店で立ち読みする・テレビジョンの大衆向け番組を連続10時間見るなどして、消費のカギを握るF1層およびF2層の心理を研究せんとした。

その際に気づいたことが「美魔女」なるキーワードの跋扈であった。


「美魔女」とは、Wikipediaによれば「年齢を感じさせない若さを保っている大人の女性」との意で、光文社のF2層向け女性誌『美STORY』が仕掛けたものだという。

それら基本情報をもとにいろいろとググッてみると、なるほど確かに、年齢をさほど感じさせない美しい40代女性が世の中にはたくさんいらっしゃるのだなぁと、素直に思う。しかし同時に思うのは、「え~! 誰々さんって42歳なんですかっ!? 見えなーい!!!」的な、よくあるコメントへの疑問である。

確かにその誰々さんは美しく、そして若々しく、さらに言ってしまえば、もしも機会があるならばぜひとも食事あるいはそれ以上のことをご一緒したいなぁでも機会なんてないよなぁなどと、自分も思う。

しかしそれは、「誰々さんは42歳には見えない」という意味ではまったくない。

不肖わたしから見ると誰々さんはやっぱり42歳の女性であり、仮に贔屓目に見ても37~39歳あたりの女性だ。決して20代や30代前半には見えぬのだ。しかしそのうえで、それはそれとして、自分などは「もしも機会があればぜひとも(以下略)」などと思うわけである。

誰々さんご本人らが己の容姿をどう評価し、どう位置づけているのか、無論わたしにはわからぬ。しかしもしも、周囲の愚民らが言う「え~! 見えなーい!!!」を真に受けてしまっているとしたら、それは非常に危険なことだ。

人間の美醜を決めるのはいわゆる容姿による部分が大きいわけだが、それは実は「子役レベルの話」であって、大の大人のそれは「内面」の在りようで多くが決まる(……あぁ、マトモなことを言ってしまった)。となった場合、「わたしは年齢より10以上若く見える、美しくも特別な者であり、周囲の者らはその事実にひれ伏す」などという『傲慢な勘違い』に誰々さんがとらわれてしまったならば、せっかくの美しさは急速にスポイルされていくことだろう。

それと同様の悲劇は、わたしが主に研究している輸入中古車の分野でも起こり得る。


上写真はたまたまサンプルとして挙げただけだが、過日自分が取材試乗した92年式ポルシェ968カブリオレである。取材時の車両価格は約120万円。さすがはポルシェといったところで、まさか100万円そこそこには見えぬオーラをいまだ発しており、走らせてみても、そのすべてにわたる剛性感のごときものは圧倒的。すばらしき中古GTカーであると自分は判断した。それこそ、約20年落ちでこのオーラというのは「輸入車界の美魔女」と言える。そしてクルマのことをよく知らぬ者は、「え~! 120万円には見えなーい!!!」などとも言うだろう。

だがしかし、輸入中古車に乗る者にとって肝要なのは、それら意見に喜び過ぎぬことである。

無知な者あるいは愚民はさておき、見る者が見ればこの968も自分の初代SLKも、決して愚弄するわけではなく客観的事実として、「単に古い世代の中古車」である。そこを勘違いして、まるで「路上の王様」のごときふるまいを公道でしてしまった時、この968も、自分の初代SLKやアルファGTVも、本来持っている「カジュアルな美しさ」という宝物を失うのだ。

「美魔女」的存在には、それ特有の輝きがある。それは、「若さ」という幻影を追うことで生まれるのではないと、不肖わたしは愚考するものである。