「言い訳くさい店」に近寄るな(後編)
※2011年6月7日執筆
(前回までのあらすじ)どこの何の媒体かよくわからないが「インタビュアー」が、「伊達心眼流有段者」に、「実際に体験する前にその店のクオリティを知る技術」をヒアリング。「有段者」は、とある飲食店の『がんばって仕込み中』という立て札を例に「こういう“言い訳くさいこと”を臆面もなく晒す店は、業態を問わずロクなものではない」という難癖とも思える見立てを開陳。話は、「では、その見立てを輸入中古車店に応用すると?」という部分に進んだ。
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――職業人たるもの「がんばって云々」とか、そういった言い訳くさい文言を客に晒すな、と。飲食店の場合はたしかにそういった立て札をたまに見かけますが、中古車店にはそんなモノないですよね? どうすりゃいいんですか?
「伊達心眼流奥義っ “仲良きことは疑わしき哉”!」
――は?
「いやね、たまにあるのですよ。従業員と常連客がBBQやらツーリングに団体で行った際のスナップ写真を店内の壁にベタベタ張りまくって、そこに色つきのマジックかなんかで『ぉ客さま10名と一緒に海へ行ったのらぁby 受付担当Chika』とか女性スタッフが書き入れてる、いかにも『ウチは陽気で楽しい店でござい』って感じにしてる店が」
こんな感じの女性スタッフが「なのらぁ~!」と。写真はイメージです
「ぉ客さまと富士サンに行ったのらぁ~!もぉ楽しすぎっ!」とか。これもイメージで、実際のお店やここに写ってらっしゃる人々と本文は一切関係ありません。photo by toshihiko2001
――いいじゃないですか。行ったんでしょうから、海。楽しかったんでしょうから、BBQ。
「もちろんどこに行こうが構いませんよ。そういったイベントで顧客を巻き込むマーケティングを否定するわけでもありません」
――じゃ何に文句言ってるんですか?
「ブログでやれよってことです。天下の往来……ではないけれど、それにある意味近い店頭に超内輪の写真をベタベタベタベタベタと張りまくり、『ほら、ガイシャに乗れば、ウチでガイシャを買えば、こおおおおんなに楽しい日々が始まるんですよ! みんな仲良しなんですよおおおおお!』と煽る、その恥じらいの無さというか押し付けがましさ。それは9割方の確率で“何らかの欠落”の裏返しなんです」
――そんなもんですかねぇ。
「ま、商談スペースのサイドテーブルかなんかにPhotoアルバムがポロっと置いてあって、『弊社ではクルマを購入されたお客様とのツーリングイベントを定期的に開催しております。この写真はその模様の一部です。よろしければご覧ください』みたいな感じなら全然悪くないですし、天下の往来じゃなくて『居間』みたいなものである店のブログとかに、内輪で盛り上がってる写真をガンガン載せるのはいいと思いますよ。でも、いきなり、店頭で、by Chika(仮名)って、何だよその唐突なフレンドリーさは!? という話です」
――ふーん。でも、それだけで決めつけるのもなぁ……。
「信じる信じないはあなた次第ですけどね。またこれはちょっと一概には断定しにくいので話半分で聞いてほしいのですが、『ご成約! 鯖野馬夫様』『ご成約! 鰆田鹿造様』みたいな短冊っつーんですか? 縦長の、筆書きの。あれがズラーーーーーーーーーーーっと並んでショールーム内に張ってある店では、あまりいい経験をした記憶がないですな」
――「言い訳くさい」というのと同時に、前にも話していただいた「自分を大きく見せたがる人や店に要注意」ってことなんですかね、結局?
「日垣隆さんみたいな人や店にご注意あれ、ってことですよ」
――誰ですか、それは?
「ご自分で調べてください。まぁ誰しも虚栄心のようなものはありますから、あまり厳密にそこを責めるのもどうかと思いますが、極度に肥大化した虚栄心は、周囲にも本人にもドえらい災厄をもたらします」
――ふーむ。
「そういうもんですよ。じゃ、また。いつでも呼んでください」
――はぁ。