輸入中古車400勝

中古車ジャーナリストの雑文一式。

掘り出しモノ問題

※2011年5月26日執筆

 

輸入中古車に「掘り出しモノ」というのは存在するのか? そもそも掘り出しモノという言葉の定義をしなきゃなりませんが、なんつーんでしょ、「価格がえらく安い割に程度がかなり良い」ってことですかね。当たり前の見解ですみませんが。

大昔に不肖伊達が編集していたB5版の輸入中古車雑誌で「掘り出しモノ大集合!」みたいな企画が大人気でしたが、それは上記の意味ではなく「年式が古いのに走行距離がドえらい少ないクルマ」って意味合いでした。人気企画でしたが、距離走ってない古いクルマってのは今にして思うと正直ビミョーですよね。そういう物件の内装とかはたしかにすっごくキレイでしたが。

それはさておき、「掘り出しモノ」は存在するのか問題。あるっちゃある、ないっちゃない……という非常に日本人的な言い方で大変恐縮ですが、不肖伊達の見解はどうしてもそうなってしまいます。


基本的にはさぁ、「値段なり」なんだよね、中古車って。「全国一の安さ!」みたいな売り出し方してる輸入中古車店の物件にロクなもんは無いし(注:前記カギカッコ内の文言は、実在する中古車店の宣伝文言と一切関係ありません。……ありませんからね!)、強気の値段設定してる店の在庫物件は、やっぱイイですよ。中も外もキレイで、異臭とかもなく、キモとなる箇所はちゃんと整備されてるし。不肖伊達がこれまで買ってきた輸入中古車も、基本的には後者が多い。それなりの値段は出しましたさ。例えば今乗ってる99年式アルファGTVも、同年式・同グレードの底値は当時70万円ぐらいだったけど、俺のはたしか車両108万円。絶対額としては激安ですが、同年式・同グレードのなかでは決して激安ではない。


しかしですね、ごくたまにあるんですよ。「社長! こんだけのタマなんだからもっと高くしても売れるでしょ!」という物件が。

仕入れルートの違い(AA=オートオークションか直接買い取りか、とか)っつー要因もありますが、基本的にはAAだろうが買い取りだろうが、コンディション良好な人気モデルの仕入れ価格はどうしたって高くなります。だから、掘り出しモノ出現のメカニズムは仕入れ値の違いではなく、その店がどんだけ乗っけてるかということなんですね。ぶっちゃけ。

「乗っけてる」というのは、店側の粗利です。慈善事業じゃないんだから粗利を乗っけるのは当たり前の話。で、ある店(A店としましょう)は、仮にBMW旧型3シリーズの仕入れ値が50万円だとしたら100万円で販売します。仮の話として。で、それとまったく同じ3シリーズをB店が同じ50万円で仕入れたとして、でもB店は「ウチは25万円も乗っければ十分利益出るから75万円で売りますわ」としたとします。そうなると、(実際にはあり得ない話だが)まったく同じコンディションの旧型3シリーズが片や100万円で、片や75万円となります。

これが、不肖伊達などがたまに店のバックヤードで発見する「掘り出しモノ」発現の基本メカニズムでして、そういう意味で「あるっちゃある」と冒頭申し上げた次第です。


でもまぁ難しいんですよね、これの判別が。まったく同じ3シリーズでも「売価75万円」より「売価100万円」のほうがなんとなくコンディション良さそうに思えてしまうし(業界問わず、モノの値段は高いほうが信用されるんだよね。その実質とは無関係に)、今度はC店という店が話に登場してきて、そこも同年式の3シリーズを75万円で売ってるんだけど、それは掘り出しモノでもなんでもなく、15万円で仕入れたヤツに60万円乗っけてるだったりもするし。それでいて「ウチは薄利多売だから安いんです!」って言ってるかもしれないし。

なので、あんまりオチのない話ですみませんが、基本的には「中古車に掘り出しモノはない。すべては値段なりだ」と思っていたほうが、中古マンの人生はラクです。でも、たまに掘り出しモノが存在するのも事実なので、探してみる価値はあるでしょう。その場合は拙サイトの伊達心眼流選術をお読みいただいたき、「人物中心説」を採用したうえで各輸入中古車店に突撃すれば、きっといいことあるんじゃないかと思います。敬礼。