輸入中古車400勝

中古車ジャーナリストの雑文一式。

新型スバルXV 2.0i-L、本日納車セリ!

『野田ともうします』という名作マンガがありましたが、わたくしは伊達ともうします。「輸入中古車ジャーナリスト」として生計を立てておる者ですが、その実質はジャーナリストなどという大げさなものではなく、単なる散文書きです。ただ、「輸入中古車散文書き」では語呂と字面とリズムがイマイチだからという理由でのみ「輸入中古車ジャーナリスト」なる肩書を自称している次第です。

 

そんなわたくしがこのたび新型スバルXV 2.0i-Lなる国産車を購入し、本日ディーラーにて納車と相成ったわけですが、「中古ガイシャ専門の散文書きがなぜ、国産車の、しかも新車を買ったのか?」ということにつきましては日を改めてご説明申し上げます。

 

また、新型スバルXV 2.0i-Lというクルマのインプレ的なアレにつきましても、今日ここで述べるのは時期尚早と言えましょう。なぜならば、本日さっそく箱根のターンパイクまで行ってきましたものの、なにせ納車初日ですから、慣らし運転っつーことで2000回転とか、最高でも3000回転弱ぐらいまでしか回してません。なので、インプレなんてやりようがないわけです。ということでそこにつきましても後日、あらためて発表させていただきたい所存です。

 

それより何より本日申し上げたいのは、「新車の納車日という晴れの舞台に、ユーザー(お客)は果たしてどう立ち向かうべきなのか?」ということです。

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何台も何台も新車を購入している人は納車なんてもう慣れっこなんでしょうが、こちとら中古車が専門です。新車と名が付くものは高校1年生のときにバイトして買った自動二輪のホンダCBR400Fのみ。いったい何をどうすればいいのか、どんな顔してディーラーに行けばいいのか、見当もつきません。

 

ライターとしては後輩ですが、スバル道においては大先輩であるマリオ高野くんという人間に聞いてみましたところ、スバルディーラーで新車を買うと、その納車日にはどデカい花束を手渡され、ディーラースタッフ一同が列を作り、大拍手にてお客を送り出すという一大セレモニーが行われるとのこと。

 

そうであるならば、こちらもやはり一張羅で正装し、厳粛な面持ちでもってその大拍手と花束を一身に受け止めるのが礼儀なのかもしれません。

 

や、でもそれはちょっと恥ずかしいです。

 

わたしとしては、もちっとクールに「やめてくださいよ、そういうの。総額で300万円を超えるとはいえ、車両価格でいうとせいぜい250万円ぐらいの大衆実用車を買っただけなんですから、出がらしに毛が生えたぐらいの日本茶の1杯も出してくれればそれで十分ですから」程度のノリでいきたいと熱望しています。

 

が、よく考えてみると、それもなんだか中二病っぽい。やはり嬉しいは嬉しい納車日なわけですから、そんな無理してスカす必要もない。「うおおおおおお! オレは今、モーレツにシアワセだ! うおおおおお! 皆さんありがとうっ!!!」ぐらいのリアクションするのが、逆に大人の礼儀である気もします。

 

その他、例の「シートにかぶさってるビニールをいつ取るか?」という問題についても頭を悩まされます。

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その場でディーラーの担当セールス氏に取ってもらうのが平成の世の王道なのかもしれませんが、こちとらあいにく昭和の男ですから「あのビニール」には少々の憧れがある。つまり、できれば自分でバリバリッと外してみたい。しかし一度そのままの状態で自宅に帰ってしまうと、未練と優柔不断からビニールを取り外すタイミングを逸し、「いつまでも新車時のビニールかぶりっぱなしで乗ってる」という、悪しき意味での昭和のおじさんみたいになってしまう恐れを我ながら感じています。

 

自分はいったいどうすればいいのか……まったくわからない。

 

しかし何でもそうですが、わからないときは「基本」に立ち戻ってみるのがいちばんです。すなわち今回の場合で言うと、「とりあえず人様とお会いするのだから、とりあえずネクタイしとくか」という社会人としての基本戦術で突き進むのが良いのではないか……ということです。

 

本当は洋装たるネクタイ姿ではなく紋付袴でいきたいところですが、あいにく当方はその持ち合わせがございませんので、次善の策としてネクタイを締めるのが良かろうとの判断にもとづき、年に一度か二度しか締めないネクタイを本日、自分は自分に装着いたしました。

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そして拙が住まう長屋から徒歩15分の某スバルディーラーへと向かいました。

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欧州車ディーラーでは絶対に見ることのない「店舗の前にママチャリが停まっている」という牧歌的な光景に、すれっからしとなったわたしの心が思わず癒やされます。

 

そして保険関係の事務手続きを済ませ、いわゆるコックピットドリル的レクチャーをみっちり受け、いよいよキーを受け取りディーラーを後にするタイミングがやってきました。

 

前述のマリオ高野くんからの情報によりますと、このあたりのタイミングでディーラー職員の皆さまが「……さて、そろそろ例のヤツ、やりますか」みたいな雰囲気とともに三々五々集まってきて、お客(今回の場合でいうとわたし)から見て両サイドに列を作成し、盛大な拍手とともに、こっ恥ずかしい大型の花束を手渡してくれるとのこと。

 

……かなり恥ずかしいですが、よござんす。覚悟は決めてまいりました。そのためのネクタイです。いつでもどうぞ、さあどうぞ! カマン、ガイズ! レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥギャザー!!!

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……という具合にそれを正眼の構えにて待ち構えていた自分ですが、いつまでたっても職員各位は各自のデスクから動く気配がなく、「それでですね、例の件ですが」みたいな感じで各自の業務電話を忙しそうにこなしています。

 

わたくしは担当セールスであるM尾氏に尋ねました。

 

「……ということで、ええっと、僕はもう帰っていいわけですね?」

 

M尾氏は答えました。

 

「はい! 以上でございます! このたびはお買い上げ、誠にありがとうございました!!!」

 

たった1人で最敬礼的にわたしを見送るM尾氏の姿をバックミラーでなんとなく眺めつつ、わたしは徒歩にて15分、スバルXVで約2分の自宅へ向かいました。

 

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や、より正確に申し上げますと、XVで約3分の場所に位置するENEOSにてレギュラーガソリンを満タンにしてから自宅駐車場に向かったわけですが(国産車はレギュラーガソリンでOKなんですね。経済的で素晴らしいです)、窓を開けて走行していました関係で、一張羅のネクタイが虚しく風に吹かれていました。友よ、風に吹かれていたのです。

 

わたしはひと筋の涙を流しました。いっそこのまま新型XVを多摩川の丸子堰あたりに沈めてしまおうかとも思いました。

 

しかしせっかく月賦で購入した新車ですから、いきなり初日に丸子堰に沈めてしまうのもアレでしょう。わたしは自宅に戻ってとりあえずクリネックスティシューにて涙をぬぐい、箱根を目指すことにしました。いちおうは慣らし運転ってやつを行い、その後に取るべき態度を決定しようと思ったのです。

 

そして箱根へ向かう道すがら、わたくしの頬に再び、ひと筋の涙がこぼれました。

 

それは歓喜の涙でした。(次回へ続く)