輸入中古車400勝

中古車ジャーナリストの雑文一式。

夏のシトロエン2CV耐久人体実験(前編)

※2011年8月17日執筆

 

気がついてみればアルファロメオに関することと、奇譚シリーズなる駄法螺しか書いていない気がする昨今。そういえば我があばら家の車庫には88年式シトロエン2CVチャールストンもあることを思い出した。

2CVといえばスズキさん(元NAVI編集長、現ENGINE編集長)である。過日、生業のほうでスズキ編集長にインタビューした際、自分はスズキさんに尋ねた。2CVって日本の夏でも乗れるものなんでしょうか? と。

スズキ師答えて曰く、「ドゥシュヴォーはね、いろいろなところから風が入ってくるから、結構大丈夫なものなんだよ。夏だって全然普通に乗れるよ」

ダンディな声で、ダンディズムあふれる態度で、スズキさんはそう言い切った。しかし、言い切りながらも、その眼の中に何らかの迷いのような微妙な色――通常の絶対的な自信あふれるスズキ師の眼にはあまり浮かばないだろう色――があったことを、自称人間観察のプロ(しかし機械にはからきし弱い)である自分は見逃さなかった。

実際のところはどうなのだろうか?

この夏、それを常々考えながらも、日々の雑務や怠慢と貧困のためなかなか実証実験に踏み切れなかった自分だが、なぜか知らねど今日の朝、天啓のような「ヤル気」が自分を襲い、自分はあばら家を出るやいなや2CVのバッテリーをつなぎ、近隣の宇佐美で給油および洗車を行い、鎌倉へ向け旅立った。もちろん、手ぬぐい数枚と替えのティーシーャツ、そしてポカリスエット数本を携えて。

 

写真は見栄張って丸の内ですが、本当の出発地は永福町のしょっぱい住宅地です

 

本日の東京地方の予想最高気温は34℃だが、午前11時現在の実測温度は約32℃。まぁ下写真の昭和中期モノと思われるアルコール式寒暖計(なぜか有限会社フォッケウルフに転がっていた)がどれほど当てになるかは別として、体感的にもそんなものだ。暑いが、我慢ならぬほどではない。

 

昭和中期の品と見られるアルコール式寒暖計。なんでこんなものが事務所に?


が、昭和な寒暖計を車内に移すと赤色の液体は見る見るうちに上昇し、40℃に迫らんとする。正直クソ暑いぜよ。だがしかし、駐車場の定位置から微速前進させるだけで、シトロエン2CVの車内には妙に爽やかな微風が吹き込んでくる。正直涼しいぜよ! ほかのクルマにはない風の入り方ぜよ! これが、スズキさんがおっしゃっていた「ドゥシュヴォーはね、いろいろなところから風が入ってくるから」か!

 

こちらがベンチレーター

 

跳ね上げ式のウインドウだす!

 

機械にはとんと興味がないので正式名称は知らぬが、上写真の左右ベンチレーターを全開にし、同じく左右の窓全開で跳ね上げれば、シトロエン2CVというクルマは、ちょっとでも動いている限りはかなりいい風が入ってくる。車速と風量の関係は、以下のニュアンスとイメージしていただきたく。

・微速前進=扇風機の「微風」ぐらい
・中速前進=扇風機の「涼風」ぐらい(メーカーによっては『中』とか)
・全速前進=扇風機の「強風」ぐらい

全速前進の際に風がガンガン入ってくるのはある種当たり前だが、2CVで括目すべきは、本当に超々微速前進であっても、とにかく動いてさえいれば必ず「微風」が吹いてくるところだ。

 

走り出して数分後、気がつけば昭和な寒暖計の目盛は35℃まで下がっているが、感覚的には35℃もないね。「クソ暑い日の木陰。だいたい31℃ぐらい?」ってな体感温度で、かつそこに天然扇風機の「微風」ないしは「涼風」が吹いてくるわけだから、もちろん暑いけど、全然我慢できるというか、暑いのが好きな人ってたまにいるじゃない? そういう人であれば「却って気持ちいい!」とか言いそうなニュアンスと思っていただきたく。

 

走ってる分にはとにかく快適だす

走ってさえいえれば、シトロエン2CVは真夏の日本でもOKなことはわかった。もう、5秒でわかった。が、ずっと走ってばかりもいられないのが公道を走るクルマの宿命で、信号が赤になれば止まるし、渋滞が発生しても止まらねばならぬ。

そのときにどうなのかといえばアナタ、そりゃ暑いですよ! 8月半ばの日本ともなるとですね、渋滞どころかただの信号待ちでもジワ~ッというかダラーッと汗出てきますし、そこそこ渋滞していた本日の環状八号線を杉並区から世田谷区の第三京浜入口手前あたりまで走っただけで、正直プチ嫌になりましたよ。昭和な寒暖計は、そのとき40℃ぐらい。……そりゃ嫌にもなるわ。

 

環八・瀬田交差点付近にて。……40℃!

しかしそこから第三京浜に入り、横浜新道→横浜横須賀道路→逗葉新道というルートを行く真夏の2CVは、平成の今こんなフレーズを使う奴はいないのかもしれないけど、「ゴキゲン」ですよ! どうゴキゲンかと言いますと……というところで小生、唐突に疲れました。ゴキゲンであったのは確かですが、さすがに真夏の2CVはちょいとオッサンの身体にはキツイ部分もあったようで。

ということで、続きというか後編は明日書きます。敬礼。