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中古車ジャーナリストの雑文一式。

アルファロメオ、漢の対決2011(加速/試乗編)

※2011年8月2日執筆

 

(前回までのあらすじ)ひょんなきっかけから「漢(おとこ)の対決」をすることになった、不肖伊達の中期GTVとMr GTV@永福町氏の後期GTV改、そしてGTAのり氏の156GTA。「鑑賞対決」では日々のお手入れに抜かりのない後期GTV改が勝利し、「音響対決」ではフロントパイプからOver Racing製マフラーに換装されている伊達の中期GTVが完勝した。そして勝負はいよいよ最終局面、「加速対決」と「試乗対決」に!

 

 

湾岸ミッドナイト。ザ・クロック・セイズ・トゥーサーティ・エイエム、すなわち時刻は午前2時30分。何台かの長距離トラックが左車線前方を巡航している姿は確認できるが、我々の勝負を阻害するほどの量ではない。では、始めようではないか。漢の「加速対決」を!

……というのは真っ赤なウソで、現場の時刻はまだまだ23時ぐらい。首都高湾岸線は輸送トラックの皆さんや、自家用ミニバンをのんびり走らせるパパさんなどでフツーにちょい混雑してます。ということで早々に予定を変更し、よ~いドン!で行う「加速対決」は中止。その代わり「試乗対決」に、加速対決を兼ねさせることとしました。

てなわけで、まずは試乗対決で得られた知見に基づく「変則的加速対決」の結果です。


【漢の加速対決・結果発表】

第1位:05年式アルファ156GTA(走行2万km台、フルノーマル)


これはもう、モノが違いますね。伊達が普段乗ってる3L中期型の加速とは「3馬身差」って感じ。いやはや、「コンディションの良いGTA」とはこんなにも速いのかと。以前書いたエントリの147GTAもエンジンの調子は良かったと思いますが、さらに完調なGTAは鬼速ですわ。近日中にそのエントリは改ざん、じゃなかった改稿する予定です。

第2位:04年式アルファGTV 3.2 V6 24V(走行2万km台、ECUチューン済み)


これも速いですね。でも、GTAで感じたほどの「3Lとの圧倒的な差」はなかったかな。図(?)にすると「156GTA←(2馬身)←後期GTV改←(1馬身)←中期GTV」みたいな感じです。あくまでイメージとして。押忍。

最下位:99年式アルファGTV 3.0 V6 24V(走行5万km台、マフラー以外はノーマル)

ま、自動的にこうなりますわな。決して遅いクルマじゃないんですけどね。それに僕ぁ加速の良さとかそれほどは求めてないし、このぐらいで十分だし(←言い訳タラタラ)。

 

【漢の試乗対決・結果発表】
いよいよ最後の種目、「試乗対決」です。が、加速対決と違って、明確な指針や判定材料みたいなものはないジャンルだけに、まずはそれぞれのクルマを試乗してみた際の「印象」をツラツラと述べてみましょう。


●05年式156GTAセレスピード
鬼のようなダッシュ力については、前項で述べたとおり。それよりも少々驚いたのが、「全体の“ぶ厚さ”」とでもいうようなものだ。車両重量は1420kgと、不肖伊達が乗る中期GTVとまったく同じなのだが、体感的には中期GTVより100kgほど重い。それは「重くて鈍重」というニュアンスではなく、「さまざまな部位を強化した結果として、全体の重量が若干増した」といったニュアンスだ。細部のタッチまでを含むすべてに重厚感があるため、ちょっとドイツ車チックな印象も受ける。同じアルファであっても、すべてが華奢な中期GTVとはまったく別の乗り物と言えるだろう。

しかしそれでいて、ステアリングおよびそれがもたらすクルマ全体の動きはウルトラクイック。MJブロンディ氏がよく言うところの「ステアリングを切る前から曲がり始める」ってやつだ。試乗前、この車両のオーナーであるGTAのり氏がわたしに心配そうに言った。

「GTAのステアリングはロック・トゥ・ロック1.75回転しかありません。ノーマルの156より20%鋭くなっていて、ほとんど遊びがないんです。だから、切り過ぎには絶対に注意してくださいね……」

……GTAのりさんよぉ、わたしゃ別に速く走るプロでもなんでもないけど、十数年以上、フィアットX1/9からランボルギーニまでを雑誌撮影のため無キズで運搬してきた、ある意味でのプロだぜ? そのプロである俺様が、たかがアルファでコケるわけねえだろ?……なんつってナメてたら、最初のコーナーで刺さりそうに。すみません! 土下座!

まぁ「刺さりそうに」ってのはこの場を盛り上げるためのウソですが、4次元殺法的な切れ方にちょい驚いたのは確かです。ほんとよく曲がるわ~、このクルマ。

それでいて「足回りがガチガチなんで乗っててツライ」ということは一切なく、ファミリーカーとしても十分イケる感じ。ていうかGTAのり氏は実際このクルマを家族グルマとしても使っている。「音響対決」のところで述べたとおり、アイドリングや低回転域では(社外マフラー装着アルファと比べて)かなり静かだが、中回転域以上になると耳に届いてくる適度なサウンドも、非常に心地よい。

うむ。速くて、快適で、音が良くて、そして死ぬほどよく曲がる、156GTAというクルマ。相手にとって不足はないぜ……。ん? ていうかこれってむしろ、中期GTVのボロ負けってことなのか????

 


●04年式GTV 3.2 V6 24V改
Mr GTV@永福町氏が「サーキットおよび峠専用マシン」として使っている個体だけに、サスペンションはビルシュタインのいわゆる車高調で、運転席シートはRECAROのセミバケットタイプに換装されている。ただし助手席は純正ママで、色はブラウンのレザー。そちらのほうに腰かけてみると、さすがは後期型。座面位置が高すぎてちょっと嫌になる中期型のそれと違い、非常に腰にしっくりくる。サーキット向けにセッティングされているビルシュタイン車高調も、意外にも「公道ではちょっと……」といった嫌な硬さはなく、ギャルも納得の減衰力(よく知らんけど)。Mr GTVさんはこのマシンに奥方もお子さんも乗せるつもりはないそうだが、わたしが想像するに、仮にご家族を乗せたとしても苦情が出ることはあるまい。そんなニュアンスの足回りだ。

しかしまぁ、足の話はある意味どうでもいい。アルファロメオの命たる「エンジン」について考えてみよう。

吸排気ポートやバルブタイミング、ECUなどがモディファイされている156GTAのスペシャルな3.2リッターV6はさておき、後期3.2リッターV6は「中期3リッターV6を200cc分モリッとさせただけで、基本的な感触は同じだべ?」と勝手に推測していた。

が、実際はまるで別物だった。200cc分(感覚的には300cc分?)後期GTVのほうがモリッとパワフル&トルクフルなのは当然として、エンジンの回転感覚っつーか感触が、ずいぶんと異なるのだ。

何種類かの言い方をしてみよう。
・中期3Lは乱暴、後期3.2Lは上質
・中期3Lは活発、後期3.2Lはおとなしめ
・中期3Lは安い(=若い人が買う)クルマのエンジン。後期3.2Lは高級車のエンジン
・中期3Lのエロさは「あけすけ」。後期3.2Lのそれは秘め事的

まぁなんつーか「中期3Lのほうがピックアップは鋭いですね」ってひと言で、もしかしたら済むのかもしれませんが、なんかそれだけだとちょっと違うような気がしたので、ツラツラ書かせてもらいました。うむ~。

 


●99年式GTV 3.0 V6 24V
このクルマについては、他2車のインプレッションの中で「引き合い」として既にいろいろ述べているので、ここでは簡単にいきましょう。

・車重1420kgってことで実際は大して軽くないんだけど、他2車と比べると妙に軽い、というか軽快に感じる
・それは「華奢」ということなのかもしれない
・華奢であることを是とするか非とするかは、人それぞれだろう
・フロントパイプからのOver Racing製マフラーが奏でる音は素晴らしいと、改めて実感。ある意味フェラーリなんて要らない
・走行5.4万km分が経過したショックアブソーバーは、やや抜けている。厳密に言えばそろそろ新品に替えたほうがいい
・しかし中古車道というのは「厳密に・神経質に」部品交換を行うのだけが是ではない。言葉は悪いが、騙しだまし、のらりくらりと付き合うのも一つの道だ(パーフェクトを望むならば新車を買いたまえ)。そういった意味で、ダンパーを替えるべきかどうか少々悩む。が、わたしは恐らくまだ交換しないだろう

 

……と、以上が「試乗対決」において、不肖わたしが各車に対して感じたことです。これをどう順位づけするのか? …………難しすぎて無理です! ということで「試乗対決」は勝手ながらノーコンテスト(無効試合)とさせてください。

で、最終的な見解は近日公開の「アルファロメオ、漢の対決2011(魔界転生編)」で述べさせていただきたく。


大変長くなってしまいました。本日のところはこのあたりで失礼いたします。