輸入中古車400勝

中古車ジャーナリストの雑文一式。

対水アカ戦、完全勝利報告!

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クルマ生活のお役に立つ話を書く才能には著しく欠けている小生ですが、「愚にもつかない話」についてはなかなかのものです。……誰も言ってくれないので自分でそう言うしかないのですが、エニウェイ、各媒体の編集担当者様におかれましてはぜひぜひ、愚にもつかないことをサラサラッと書いて1本10万円ぐらいのおいしい仕事を、わたくしめにご発注いただければ幸甚に存じます。うち3万円は小生の生活費および老後資金とさせていただき、残り7万円は日本赤十字社などの然るべき機関に寄付いたしますので。何とぞよろしくお願いい申し上げます。

 

 

 

それはさておき、前回の続きであります。

 

【前回のあらすじ】

96年式マツダ(ユーノス)ロードスターにこびりついている20年物の強烈な水アカを落とすべく様々なケミカルを試し、最終的には「パイプハイター高粘度ジェル」という禁断の戦術核を使用するに至ったが、結局水アカは落ちず。自暴自棄になっていた筆者のアイフォーンにミスターXと名乗る男から電話があり、「その水アカを落としたければ本日20時、首都高辰巳PAに来い」とのことだったが……。

 

 

某日20時。我がNAロードスターにて首都高辰巳第一PAに到着すると、50代と思しき日本人のおっさんが、「日本車大好きデス! ジーティーアール、インプレッサ、サイコウニCOOLデス!」みたいな白人青年と、エゲレス語で熱心に会話している。自分はエゲレス語にはとんと疎いため何を話しているのかは不明だが、おっさんのエゲレス語は非常に流暢である。あのおっさんが「ミスターX」なのだろうか?

 

彼らの会話が終わるタイミングを見計らい、わたしは声をかけた。えーっと、あーゆーミスターX?

 

おっさん「……伊達くんか? 日本語で大丈夫だ。左様、わたしがミスターXである」

 

わたし「このたびはどうも。さっそくですが、読者の皆さんもこんなやりとりはどうでもよくて、水アカに関する結論をサクッと知りたいはずなんで、どうすればいいのか教えていただけますか?」

 

おっさん「うむ、了解だ。……しかしアレだ、このカギカッコの前の“おっさん”っていうのだけはやめてくれるかな?」

 

わたし「なるほど失礼しました。では次の会話文から変えましょう」

 

などとやりとりをしながらミスターXの経歴のようなものをお聞きすると、どうやらX氏は家庭の事情で幼少期に英国へ渡り、成人後、彼の地で自動車のレストレーションについてディープに学んだ人物のようだ。

 

Mr.X「で、君のクルマの水アカというか黒ずみを今確認させてもらったが、これは単純な水アカではなく、化学物質を含むさまざまなマテリアルが20年の間に堆積し、超強烈にこびりついた結果のものと思われるゆえ、ケミカルで落とすのは正直無理であろう」

 

わたし「なるほど。では諦めて泣け、と?」

 

Mr.X「いや、諦めることもない。“水研ぎ”でなんとかなる可能性は大である」

 

わたし「水研ぎっつーとアレですか、今日の昼間、わたしが泣きながらホームセンターに走っていって買った耐水サンドペーパーで、水をかけながらヤスリがけするというアレですね?」

 

Mr.X「左様だ。君が考えた『こうなったら水研ぎだ!』という方向性自体は間違ってない」

 

わたし「お褒めいただきありがとうございます」

 

Mr.X「別にホメちゃいない。未経験の素人がいきなり自己流で水研ぎをやるなんて、なんて愚かなんだと思っただけだ」

 

わたし「さいですか」

 

Mr.X「左様だ。で、君ではなくNAが可哀想なんで、君に水研ぎのやり方を教えてあげようと思い、君のアイフォーンに電話した次第だ」

 

わたし「なるほど、さいですか。ではとっとと教えてください」

 

Mr.X「うむ、了解だがその前にひとつ。もちろん細心の注意を払うし、わたしはその分野の経験も豊富であるが、『車のボディにヤスリをかける』というのはそもそもなかなかのアレである。本当に試してみて良いか? あとで私に文句を言われても困るぞ?」

 

わたし「……人生はすべて自己責任であり、ヘルプ・マイセルフの精神が重要です。すべての責任は、ミスターXさんを信頼したこのわたしにあります。ぷりーず・ごーあへっどです」

 

Mr.X「無理して英語を使わなくてもいいが、とにかく了解だ。ではまずは1000番ぐらいの耐水サンドペーパーと、水が入ったスプレーボトルを私に貸しなさい」

 

左手にスプレーボトル、そして右手に1000番の耐水ペーパー(小さく切って二つ折りしたもの)を持つミスターX。当該箇所にスプレーで水をガンガンかけながら、右手のペーパーでサラサラと患部を擦っていく。すると……何をやってもビクともしなかった強烈な黒ずみが、あっという間に消滅した! ニコリと笑うミスターX。その手が、わたしの右の二の腕にそっと触り、きわめてソフトにスライドする。

 

わたし「やめてください。そのケはありません」

 

Mr.X「そうではない、『このぐらいの力でおやりなさい』という説明だ。人差し指と中指、薬指をそっとテーブルの上に載せてなでる程度の、そんな軽~い力でやるのだ」

 

わたし「なるほど」

 

そして1000番の次に使うべきペーパーの番手や、「あて板」を使うべきポイントとその使い方、最終的な仕上げ方等々を口で説明しながら、実演してみせるミスターX。途中、わたしも自分で少々やってみる。なかなか塩梅が難しいが、やってやれないことはなさそうだ。

 

Mr.X「で、気がついてみれば……どうだい?」

 

……なんと、フロント右側の強固な黒ずみが完璧に落ちているではないか! そして、いかにもサンドペーパーをかけましたというザラザラ表面にもなっていない! うおおおおおおおおおおお!

 

Mr.X「私が教えられるのは、というか今教えるべきは、ここまでだ。残る半分つまり左サイドは明日、明るい時間帯に自分でやってごらんなさい。くれぐれも力を入れすぎずにね。じゃ、チャオ」

 

そういって颯爽と去っていくミスターX。……ノーギャラなのに、本っ当にありがとうございました!!!

 

 

そして翌朝。わたしが自力にて最終的に仕上げたのがこちらだ。

 

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ちなみにコレがBefore。

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逆サイも、ご覧のとおりの美肌に。

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追い込みすぎるとマズいので、落ちきっていない部分も微妙にある。また初めての作業ゆえ、追い込みすぎてしまったかもしれない部分もある。しかしいずれにせよミスターXのアドバイスにより、長きにわたった「対水アカ戦」は完全勝利に終わった。また、ただ黒ずみを落としただけでなく「それを落とすためのフィジカルな技術」を学んだことで、今後も発生する可能性がある黒ずみに対しても「恐れるに足らず!」と思えるようになったことがデカい。

 

「Xさん、本当にありがとうございました……」

 

そう言ってわたしは家の仏壇にあるアレをチーンと鳴らし、丁寧に手を合わせた。

 

するとまた、何者かからアイフォーンに着信があった。

 

Mr.X『死んじゃいないんだから、仏壇に手を合わせるのはやめてくれるかな?』

 

失礼しました。