輸入中古車400勝

中古車ジャーナリストの雑文一式。

デルタ vs.イタリアの伝統

※2012年7月6日執筆

 

「意外とこのまま全然壊れない気がする、デルタ……」などと思っていた矢先、走行中にふとインパネ内の電圧計を見てみると、その針が妙に左にかしいでいる。下写真はそれでもなんとなくやや持ち直した局面でのものだが、一時は左側の「負のレッドゾーン」に突入しかけていた。場所は埼玉県内の某ド田舎。……我が94年式デルタは未開の地(?)を無事脱出し、都内の工場までたどり着くことができるのか。それともこの蛮地でオルタネーターが息絶え、デルタに「初黒星」が付くのか? わたしはとにかく所用を手早く済ませ、関越道にて都内を目指した。気温は約30℃。幸いにして道路は空いている。


未開の地・埼玉から帰京する場合、わたしは必ず関越道上り三芳PAに寄り、個人的なモンドセレクション金賞を授与したい「濃厚チーズソフト」を食すことを習わしとしている。しかし本日は、電圧降下の関係で一度エンジンをOFFると再始動が不可能になってしまうのでは? との思いから泣く泣く濃厚チーズソフトをあきらめ、かわりにフリスク等を舐めながら世田谷区の「コレツィオーネ」様を一路目指した。この94年式デルタの購入店である。

関越道を降り、環八を走る。気ははやり、焦る。……しかし、電圧計の針が若干不吉なゾーンを指しているほかは、な~んの違和感もない我がデルタではある。エアコンを恐る恐るONにしてみてもごくフツーに効き、バッテリー警告灯が点灯する気配もない。異音等も特になし。はて面妖な……などと思いつつも、ごくフツーに目黒通りのコレツィオーネ様に到着してしまった。さっそく同社メカニックの山田殿にバッテリー等々をチェックしていただく。

テスターを使いながらさまざまなチェックを繰り返した山田殿(←ナイスミドル)が、おもむろに口を開く。
「えっと、結論としまして電圧は全然十分で、逆に過充電にもなってません。オルタネーターもきちんと機能しています」

ならばなぜ、電圧計は不吉なゾーンを指す?

「電圧がおかしいんじゃなくて、電圧“計”がおかしいんですね……」

なんと、メーターのほうの誤差! いや誤差っちゅうかイタリア人のテキトーな仕事というか、単純にそれって壊れてる? というか。

なるほど。ここ1年半ほど乗っていた99年式アルファGTVが思いのほか「ちゃんとしてる」クルマであったため、どうやらわたしは「イタリアの伝統」をすっかり忘れていたようである。それはすなわち「テキトーな機器類」だ。古めのイタリア車では、例えば燃料計すらも鵜呑みにしてはいけない。「燃料の警告灯ついたけど、さっきついたばっかだから、まだまだイケるだろ」などと思っては絶対にいけないのがイタリア車だ。いや最近のイタリア車はそんなことないので、正確にいえば「古いイタリア車」だ。警告灯どころか、燃料計の針が左側4分の1あたりのゾーンに入ったらソッコーで給油すべきだろう。

そういったことを知っていたつもりの自分だったが、GTVがあまりにもちゃんとしていたため、すっかり失念していた次第だ。お恥ずかしい。

ということで我がデルタは現在のところ、30℃の日でもエアコンが効き、特に故障も起きないという、ほとんどカローラのようなクルマである。電圧計はテキトーだが、すばらしい「実用」5ドアハッチバックである。

しかし同時に、「デルタがこんなことでいいのか!?」とも思っている。