輸入中古車400勝

中古車ジャーナリストの雑文一式。

中古車のいいところ

※2012年3月14日執筆

 

カリスマ中古車ジャーナリスト兼カリスマ中年無職の名をほしいままにしている自分だが、決して新車に興味がないわけではなく、過日お借りしたゴルフRには本気で心奪われたし、また過日欧州試乗会が開催されたフォルクスワーゲンの「up!」に関しては、自動車メディアの仕事について以来初めて、そこに行けぬ自分の境遇を呪った。さらにいえばアルファロメオのジュリエッタも、さして官能的なクルマとは思わぬが、アレを普段づかいできたらさぞかしステキな毎日でおますやろなぁとも感じている。


しかしやはり、自分にとって本当の意味で魅力的なのは中古車、それも輸入中古車だ。

なぜならば、それはあまり長考する必要もなくパパッと買えてしまうからだ。そしてそのことにより、わたしの毎日がバラエティに富んだカラフルなものになるからである。

無論、自分のような中年無職とは比べ物にならぬ可処分所得を得ている者らは、欧州新車であってもパパッと買って、カラフルな毎日を送っているのだろう。それはそれで良い。めでたいことだ。しかしこちとらニッポンの中流ど真ん中である。いや、何の保証もないフリーランサー固有の将来不安みたいなものを差し引いて考えれば、「中の下」を名乗れるかどうかも怪しいところだ。

そんな怪しい自分であっても、オートローンを使えばゴルフRだろうとアウディS3スポーツバックであろうと(たぶん)買えるし、男の「ポルシェ パワーローン60回払い」を駆使すればタイプ997の認定中古車ぐらいは買えるだろう。審査に通るかどうかは別として。

しかしもしもそれらをわたしが買うとしたら、おそらくは死ぬほど長考に入ってしまう気がする。微々たる我が貯蓄高。出版不況。年金問題。ギリシア危機をはじめとする世界的信用不安。中年期を迎えたわたし個人の健康不安。下北沢の再開発。……最後のひとつは無関係のような気もするが、エニウェイ、さまざまな問題と不安をかかえるひとりのド庶民にとってウン百万円という金子は、それがキャッシュであろうとローンであろうと残価設定ローンであろうと、「果たして本当に注ぎ込む価値と意味はありや?」と考えさせられる大枚だ。逆に言うと、「それだけの価値がこのクルマにはあるのだ」と心底から確信させてくれるモデルは少ない、ということでもあるのだが。

だが輸入中古車の、それも自分のイチオシである「100万円+αぐらいのヤツ」であれば、そこまで長考に入ることはない。無論100万円+αも自分にとっては大枚であるが、健康な成人男子であれば気合と根性でなんとかなる範疇の金額だろう。それを元手に、ビビッと来たらパッと買う。ハッとしてgood。仮にno goodだったとしても、経済的にも精神的にもダメージは少ない(無論、皆無ではないが)。結果、さまざまな個性や設計思想をもった異国のクルマを、短い人生のなかで数多く経験することができる。その経験が血となり肉となり、人間性は向上し部下には大尊敬され異性にはモテモテで……となるかどうかは不明だが、少なくとも「貴重な経験」になることだけは素で確かだ。

無論、これは「中古車の優位性」を説きたいわけではなく、「こういう考え方もある」という単なる提案に過ぎない。未来を感じさせる粋な技術を盛り込んだ新車を買い、少し愛して長~く愛して。それもまたステキな一つの生き方であり、賢いやり方だ。どちらが優れているわけでも劣っているわけでもないと、自分は考える。

だいたい人生っていうんですか? それは、おおむねどんな人の場合であっても、ならして考えるとだいたい「プラマイゼロ」に落ち着くものだ。勝利も敗北もないんですよ。何の話か最後によくわからなくなりましたが。