輸入中古車400勝

中古車ジャーナリストの雑文一式。

SLK購入始末記・走り込みテスト編

※2011年11月8日執筆

 

「朝牛で 始まる男の仕事道」

誰かがそんな句を詠んでいたような気がする。今自分で作ったような気もする。よく覚えていない。いずれにせよ自分は11月7日(月)早朝、東名高速下り海老名SAの吉野家で腹ごしらえをした後、自動車メディアの聖地・箱根ターンパイクへと向かった。現物を見ることなく購入した98年式メルセデス・ベンツSLK230コンプレッサー(車両価格73万円)の「走り込みテスト」、その最終段階を行うためである。


話は若干さかのぼるが2011年11月4日(金)。13時30分に車体を受領した後、自分はフォッケウルフ第1テストコース(要するに近所の甲州街道)にて試乗テストを実施した。が、同日は十分な時間が取れなかったため、翌5日(土)は世田谷区の伊達あばら家から首都高および東関道を使い千葉市稲毛区まで走行した。不肖わたしが参加している世界的有名アマチュアロックバンド『GUSTAV』演奏会のためである。その日の道程で自分が当該SLKに対して感じたことは以下のとおりだ。

●全体的に、悪くない。ていうか結構イイ感じだね、中古車として。
●でもルーフ閉めてると上のほうでなんかミシミシいうね。仕方ないね。
●低速トルクがちょっと足りてない気もする。SLK230Kってこんなもんだっけ? それとも点火系あるいはATがちょい不調なのだろうか?
●常に、ってわけじゃないんだけどステアリングに振動が出てるね。なんでだろね?

そうこうするうちにライブハウスに到着し、同日はSLKについてはそれ以上のことを考えなかった。

翌11月6日(日)は環七および目白通り並びに関越道を使用し埼玉方面へ出撃した。その過程で感じたことは上記とほぼ同一だが、アクセルの踏み方を変えてみたり、新車時のことを色々と思い出したりしてみた結果、低速トルクの不足は「そもそもこんなもんだった気がする」という結論を自分の中で出した。5速ATをDレンジに入れたままで都市部を走っているとかったるい局面もあるが、「4」あるいは「3」を積極的に使用すれば痛痒感はほとんどない。さほど飛ばし屋さんではない自分には十分である。しかし、例の「ステアリングの振動」は、断続的ではあるがこの日も続いた。

ちなみにこの日、初めての給油を行った。その時点でのトリップメーターは258.5kmで、ハイオクガソリン給油量は28.9L。満タン法でテキトーに計算すると燃費は「リッター8.9km」ということになる。初代SLKの標準的な数値と言ってよいだろう。あと何回か給油を重ねて平均値を出さないと意味はないが、まぁご参考までに。

そして冒頭のごとく11月7日(月)朝、自分は吉野家の「おすすめセット2」を食した後、聖地・箱根ターンパイク(正式名・TOYO TIRESターンパイク)にやってきたわけである。

 

ターンパイクといえばこのアングルということで。クルマを置く角度がちょっとタテすぎましたね。

 

今度はちょっと横向きすぎたか? 一人で撮影するってのはなかなか難しいもんですな。

あまり長くなってもアレなので、どんどん結論だけ書いていこう。「自動車としての資質」ではなく「中古車としてどうなのさ?」という部分に関して言えば、以下のとおりである。

【中古車としてどうなのさ?】
●繰り返しになるが、悪くない。っていうか結構いい感じ。全体的に。
●ダンパー(笑)は走行5.3万kmなりに劣化しているようにも感じられるが、騒ぐほどではない。
●5速ATに問題なし。信号などで停止する前にほんの少々変速ショックが出ることもあるが、たぶんまだ大丈夫なのではないかと経験的に思う。
●メルセデスらしい超絶高速安定性は堪能できるが、ちょっと甘い気もする。ブッシュの劣化か? アライメントか? それともダンパー(笑)か?
●エンジンパワーは普通に出ていると思われる。さすがに新車時よりはちょい甘くなってるかもしれないが、よくわからない。
●気になるのはやはり「ステアリングの振動」だ。ジャダーっつーんですか? シミー? よく知りませんが、とにかくそれだ。常にジャダってるわけではなく、ある場面ではいかにもメルセデスらしく鏡面の上をツーッと走っているような感覚が続くのだが、あるとき突然ジャダる。シミる。そしてしばらくジャダった後、また鏡面上走行に戻ったりする。

……以上をサマると、要するに中古車としての問題点は「ステアリングに生じる謎の振動」だけということになる。これの発生原因が大したことのない部分であるならば、伊達心眼流の勝利である。しかしもしも修理に大金がかかる重大箇所であったならば、開祖として責任をとり「切腹および廃業」するほかあるまい。

 

ちなみに本稿の主題とはあまり関係ないのだが、せっかく聖地・ターンパイクまで来たのだから「初代SLKって自動車としてどうなのさ?」という部分にも簡単に触れておこう。

【自動車としてどうなのさ?】
●見た目はスポーツカー的だが、本質的にはW124型Eクラスと同じ「クルージングカー」である。そんなジャンル名があるのかどうか知らぬが。曲がり方は、Z3とかではなくW124に似ている。
●「W124とSLKなんかを一緒にするな!」という硬派マニア向けには「W202型Cクラスに似てる」と言っておく。
●SLK230コンプレッサーの過給機は、スポーツするためあるいは敵を倒すためのものではなく、自らのクルージングを「より快適にするためのサポート成分」である。なんつーか、味の素のようなものか?
●速くはないが、決して遅くはない。このあたりの感じ方は個人差があるため一概には言えぬが、自分としては十分である。

再び中古車としての考察に戻り、まとめると、つまりは「おおむねイイ感じなんだけど、ステアリングの振動だけが残念」というのが、走り込みテストを通じての不肖伊達の感想である。

果たしてジャダー(シミー?)は、大したことない部分に起因するものなのか? それとも切腹に値する重大不具合に起因しているのか?

これ以上のことは機械音痴である不肖自分にはわからぬ。それゆえ、自分は「専門家」の門を叩こうと思う。中古メルセデス整備のプロフェッショナルに、この個体の機械的状態を「診断」してもらうのだ。もらわいでか。

などとブツブツつぶやきながら自分はターンパイクを後にし、埼玉県は八潮市の工場へ向かった。断続的なジャダーとともに。
(診断編に続く)