輸入中古車400勝

中古車ジャーナリストの雑文一式。

だいたいオッケーならOK

※2011年10月27日執筆

 

慢性的な貧困と闘っている自分にしてはめずらしく日雇い仕事が立て続けに入り、過日の尾張に続き本日も、都内某所へこれより取材に出ることになった。これにより、来る正月もカビの生えた餅ぐらいなら買えそうな気配となってきた。

自分の場合、こういった近隣での取材にはフォトグラファーの機材車に同乗させていただき現地へ行くことが多いのだが、本日の業務を依頼したKカメラマン自慢の某ガイシャが整備に入っていて、今日は出動不可能とのこと。よって自分のアルファにてK氏と現場に行くことにしたのだが、いくら長い付き合いのK氏とはいえ、あばら家駐車場で泥とホコリまみれになったGTVに乗せるはあまりに失礼。ということで本日早朝、自分は近隣の宇佐美にて洗車をしてもらってから聖フォッケウルフへと出撃した。


上写真が、永福町某所の格安コイン駐車場にとめた、洗車後のアルファGTVである。美しい。「値下げしました!」という赤い下品なノボリの映り込みさえもが、愛おしい。12年落ちの中古車、ヒューマンビーイングで言えば42歳ぐらいに相当するだろうか。立派な「中年」だが、ハリのある「お肌」と凛としたたたずまい。わたしはこのクルマをやはり愛している。

とはいえ、そこはやはり「中年」ゆえ、近寄って見れば「お肌」には荒れも目立つ。具体的には以下写真のとおりである。


いわゆる洗車キズや撥ね石の跡などでそれなりにくたびれているのが、99年式アルファロメオ アルファGTV V6 3.0 24V(走行5.6万km)の実像ではある。

しかし、それが何だというのか。

遠目ないしはミドルレンジから見て「……やっぱマブいね、俺のクルマ!」と心底思えるなら、わたし個人としてはそれで十分であるし、乗車などする際にボディ間近に寄り、それなりにくたびれた箇所を目の当たりにしても、「オマエも、俺を含めいろいろな者らと、さまざまな経験をしてきたんだものなぁ。人生グランドツーリングじゃのぉ……」という感慨が浮かぶのみで、その感慨もまたオツなものだと自分は思っている。

「何事も完璧を目指すべし。それにより人は向上するのだ」と説く者もいる。いわゆる一つの人生においては、もしかしたらそうなのかもしれぬが、自分は他人様に「人生」を語れるほどの素養をもっておらぬので、それについてはノーコメントとしたい。ただ、「中古車」に関してはそれなりの場数を踏んでいるゆえ、憚りながら語らせていただく。

中古車は(特に安めの中古車は)、あんまり「完璧」を求めないほうがいいですよ。「だいたいオッケーなら、それでOK!」ぐらいのゆるい感じがいいと思います。

「伊達よ、そんなことは言われずともわかっておる! だって『中古』なんだから!」

そうおっしゃる人もいるだろう。しかしですね、人間いざお金を払ってモノを買う立場になると、そこんところ――つまり中古品であることとか、格安予算であったこととかをすっかり忘れたりするのですよ。

 

ちょっと傷ついててムキーッ!っとなり、足が少しヤレてて「人生終わりだ……」とか騒いでみたり。その気持ちも同じヒューマンビーイングとしてわからんではないですが、もうちょっと鷹揚に構えてみると、中古車購入というのは連戦連勝になるはずです。自分が『輸入中古車400勝!』と自称してるのだって、自分が勝手に決めたルールで「勝った勝った! また勝った!」とか言ってるだけですから。

 

とはいえ世の中には本当にオンボロで死にたくなるような中古車もたくさんあるので、「だいたいオッケー」の線をどこに引くのか? というのが実は難しい問題だったりします。それゆえ、最初のうちは『カーセンサー』とかを真面目に読んで、基本に忠実に選ぶのが得策であることは間違いありません。しかしある程度慣れて経験値が増えてきたら、「だいたいオッケーならOK!」の心で、本当に自分がグッとくる一台を選んでみるのが、輸入中古車選びの「本当のコツ」なのかもしれません。

そんな感じで中古ガイシャ選んでも死にゃしないということを、今月で購入後1年が経ち、依然として「中古のアルファって壊れるんでしょ?」といろいろな人から聞かれ、それでいて実は1回たりとも故障していない99年式アルファGTVの姿から、なんとなく感じ取っていただけたら幸いです。

 

……と、取材出撃前に急ぎ書いたら、途中より素の文体になってしまった不肖伊達である。……尊公らにおかれては上記を参考に、後顧の憂いなく輸入中古車の世界に突撃していただきたいと願うものである。敬礼!