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中古車ジャーナリストの雑文一式。

夏のシトロエン2CV耐久人体実験(後編)

※2011年8月18日執筆

 

自分の悪い癖で、昨日の2CVに関するエントリは長いばかりで内容グダグダだった観もある。「後編」は極めてコンパクトにいきたい。

ついでに言うと、拙ブログのエントリがどうにも長いのは、生業としてやっている編集記者業の「反動」であるのだろうと自己分析する。

どういうことかと言えば、自分は結構自分で原稿を書くタイプの編集者で、何かといろいろ職業的に書いているのだが、商業誌というのはウェッブと違い「文字数」が厳密に定められている。稀に「書き終わった原稿を元にページをデザインする」というケースもあるが、基本的にはデザイナーが文字数を決め(もちろん、そもそもどのくらいの文字量にすべきかという根本はデザイナーではなく編集が決める)、それに従って原稿を書く。20字×74行、とかね。

しかし昨今のおしゃれ雑誌は「本文量少なめ」がトレンドで、1テーマに対して実際には20字×40行程度の場合が多い。畢竟、ずいぶんと文字量超過してしまった第1稿から無駄な(?)部分を削りに削り、あぁこのエピソードもあの話も、あそこで仕入れた寄り道ネタも入れたかったけど、削らざるを得ぬのぉ……などとブツブツ言いながら20W×40Lに収めることになる。このストレスに対する反動として、拙ブログは1エントリあたりの本文量が多く、寄り道や無駄話が頻出する文章になっているのだろう。なんつってるうちにまた長くなった。

 

さて真夏のシトロエン2CVは普通に乗れるのか問題。関東地方の最高気温が35℃級であった昨日、自分が永福町⇔鎌倉で人体実験を行った結果をざっくり報告すると、以下のとおりとなる。

 

●運転席前方の左右ベンチレーターと跳ね上げ式の窓を全開にして普通に公道を走った場合、車内温度はおおむね35℃前後となる


●しかし、2CVはちょっとでも動いている限りは必ず「いい風」が入ってくるので、35℃と聞いて想像するほどのキツさはない

●走ると入ってくる「いい風」のレベルはおおむね下記のとおり
・微速前進時=扇風機の「微風」ぐらい
・中速前進時=扇風機の「涼風」ぐらい
・全速前進時=扇風機の「強風」ぐらい

●とはいえ、ちょっとした信号待ちの間にも車内温度は1℃ほど上がる。温度上昇よりも「いい風が入らない」ことがキツく、汗がジワ~ないしはダラーッと出てくる。冷水が飲みたくなる

●ちょっとした渋滞(昨日の人体実験でいえば、環八中の橋から瀬田付近までのダラダラ渋滞)が続くと、車内温度は40℃ほどに達する。実際にはこの程度の短時間であれば生死の問題にはならないのだろうが、なんとなく水ではなくポカリスエット的なものが飲みたくなる。気分的に

 

●渋滞が解消し、空いている高速道路に突入すると、先ほどまでの苦悩はすっかり忘却し、前方および側方から入ってくる「いい風(強風バージョン)」を感じながら鼻歌を歌いたくなる。が、その際の車内は風がゴーゴーいう音で結構うるさいので、歌うとしたら鼻歌ではなく本気で歌うのがいいだろう

●高速道路を巡航している際も車内温度は思ったほどは下がらず、おおむね34℃。が、体感的には30℃ほどか。繰り返しになるが、走っている限りは真夏であってもさほどツラくない

●高速道路を下り、お盆休み中の海外沿い道路を走る。当然、ところどころ渋滞している。その際は正直クソ暑い。が、ときおり左方から入ってくる「海風」っていうんですか? 海をわたってきた冷たい風を身体に感じ、「あぁ人生グランドツーリング……」とか、柄にもなく想う

 

●復路の海岸沿い道路および高速道路での状況は、往路とほぼ同じなので省略


●日差しがやや和らいでラクになるだろうと思った14時とか15時あたりに、落とし穴があった。クソ暑い真っ昼間は日光が頭上からくるため車内はいわば木陰状態となり、意外とラクだったのだが、午後になって「西日」になると、未だ強烈な太陽光線が直接身体に当たるため、けっこうキツい。ポカリスエットを一気飲みした

●永福町に戻った際は、実際けっこう疲れていた。死語かもしれないが帰宅後は「バタンキュー」だった。が、翌日である本日は、その後遺症のようなものはまったくないので、大した疲れではなかったとも言える

 

と、コンパクトな論述を意識するあまり、取材メモの羅列のごときものになってしまい恐縮だが、まぁとにかく真夏のシトロエン2CVとは以上のようなものだった。


で、結論としてどうか?

以下2つの条件に両方当てはまるのであれば、「真夏の2CV」って悪くないんじゃないですかね? というのが自分の意見だ。

 

★条件1「小仏トンネルを先頭に渋滞40km」とか、そういう日ではないこと
動いてさえいれば意外と快適な真夏のシトロエン2CVだが、ジワジワとしか動かない大渋滞に長時間ハマると、さすがにヤバそうだ。そういった日は2CVでは突撃しないほうがいいでしょう。ていうか、そもそもそんな日は冷房完備のクルマであっても突撃せず、電車を使うとか、家で読書に勤しみ教養を深めるとかのほうがいいんじゃないすか? と不肖伊達は愚考するわけだが。

★条件2「あくまで“たまに”のイベントであること」
なんというか、自分は人体実験をしてみてけっこうアンビバレントな心境になった。「もう嫌だ」という思いも正直あるし、「あの一瞬の海風をまた感じたいぜ……」という気持ちも、強がりやカッコつけではなく本当にある。ということで、「趣味としての苦行」ってあるじゃないですか? 断食とか、結構キツい登山とか、10kmや20kmのランニングとか。ああいったものと同種のノリで「よし、今日はいっちょう2CVで苦しんでみるか!」と、あくまで“たまに”やると、結構いいイベントになるのではないかと思う。ただ、やり過ぎるといろいろなモノを失うような気もするので、あくまでたまに。


このエントリを書いている日から見て明日、8月19日(金)より東京の猛暑はひと段落し、季節は秋に向かうらしい。しかしそれでも、もう少し涼しくなるまで自分はシトロエン2CVには乗らないつもりだ。でも、来年の夏、また1日ぐらいは手ぬぐいをハチマキ状にして頭に巻き、青汁の「う~んマズイ! もう1杯!」ではないが「う~ん暑い! もう1回!」てな具合で、どこかの海を目指して2CVで走っている自分の姿は、容易に想像できる。