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中古車ジャーナリストの雑文一式。

アルファロメオ、漢の対決2011(魔界転生編)

※2011年8月16日執筆

 

(前回までのあらすじ)ひょんなきっかけから「漢(おとこ)の対決」をすることになった、不肖伊達の99年式アルファGTV中期3.0とMr GTV氏の04年式アルファGTV後期3.2改、そしてGTAのり氏の05年式アルファ156GTA。「鑑賞対決」「音響対決」「加速対決」「試乗対決」の4種目で戦った結果、勝負は一進一退。結論はこの「魔界転生編」に持ち越された。

 

 

「鑑賞対決」では、日々のお手入れに余念がないMr GTV氏の後期GTV3.2が勝利し、「音響対決」は不肖伊達の中期GTV3.0が圧勝。「加速対決」はGTAのり氏の05年式156GTAフルノーマルが2馬身差をつけてゴールしたが、実際に乗ってみて総合判断を下す「試乗対決」では各車の美点が錯綜した結果、勝手ながら「ノーコンテスト(無効試合)」とした。

そんなこんなで行ってきた「アルファロメオ、漢の対決2011」も、いよいよ結論らしきものを出さねばなるまい。まずは「昭和のバイヤーズガイド」的視点で、今回の対決を総括してみよう。

【昭和的総括】
クルマ選びでいちばん大切なのは『使用目的』をハッキリさせること! ここを間違えると先行きゼッタイ後悔することになるので、まずは慎重に考えよう!

もしもアナタがアルファロメオを『オールラウンダー』として使いたいなら、ボクのオススメはズバリ156GTA。4ドアセダンでありながら加速はバツグンで、ドイツ車的な『しっかり感』もある。それでいてハンドリングのクイックさは3モデル中随一なので、運転する歓びも大いに味わえるハズ。


ボクらが大好き『デートカー』として雰囲気を楽しみたいなら、中期GTVがいいだろう。加速に関してはやや劣るけど、公道でベタ踏みすることなんてほとんどないんだから、そこは気にしないで大丈夫。そして何より、排ガス規制Euro3の影響を受けていない01年式以前の物件なら「音」もサイコー! 彼女もきっと盛り上がるハズ。全体的に華奢な感じが漂うのも、いかにもアルファって感じでキミの男ゴコロをくすぐるだろう。


『クーペとしての実質』を求めるなら、3.2Lとなった後期GTVがオススメだ。シート座面位置があまりに高過ぎるなどの中期型内装の欠点は改善されていて、3.2LとなったV6のトルク感は、中期3.0Lよりもやはり1段階以上太い! 年式的に新しいだけに、中期型と比べて各部のしっかり感も上である場合が多いハズ。音質は、Euro3をクリアするために付けられたエキマニの触媒のためにやや低いのがタマにキズ。エンジンの回転感覚も、中期3Lのほうがハッチャけてる。が、それらは「大人っぽさ」とも捉えらえる部分なので、大人なキミにはマッチするハズだ。


……と、不慣れなカタカナ多用で昭和文体を意識してみたが、バカっぽく書きすた感はあるものの、内容自体は、事実から大きくはハズれていないはずだ。今回の対決に参戦した3モデルに限っていうなら、

・オールラウンダー狙いなら=156GTA
・音を含む雰囲気があるクーペがいいなら=中期GTV
・実質と上質さ重視のクーペなら=後期GTV

と昭和的に総括することは決して間違いではないし、ある程度は「バイヤーズ」にとって役立つ「ガイド」であろうとは思う。

しかし、普段実際に中期GTVに乗り、そして他2車のステアリングを「対決」として握らせてもらった不肖伊達としては、上記のようなまとめ方にはどうにも違和感がある。ということで以下、平成の世に生きる一人の中古車研究家として、再度の総括を行ってみたい。

【平成的総括】
クルマ選びで重要なのは、「使用目的」とかそういったことは考えず(まぁ全然考えないわけにもいかんのでしょうが)、「出合い頭の衝突」みたいなものを楽しむ心構えなのではないかと、小生は愚考する。

だから、事前にあーだこーだと思い悩むのはもちろんクルマ選びの大きな楽しみではあるが、あまり事前のプランには囚われすぎず、思ってもみなかったクルマがなんか魅力的に見えたら予定変更してでもパッと買ってしまう――というのが、己の人生を広げる一つのコツなのではないか、というのがまず一つ。

そして購入後、ともに暮らすようになると、カタログを眺めたりブログを読んだりしていた頃には決してわからなかった、良いところや、逆に悪いところが、生活のなかで露わになってくる。良いところはまぁいいとして、悪いところはやっぱ気になるものだ。今回の対決で言えば、わたしの中期GTVは「実はやや非力だった」ことにガーン!ときたし、Mr GTV氏は後期GTVの音のヌケの悪さに、おそらくはガーン!ときたのではないかと推察する。

でも、「じゃ、こんなクルマ捨てちまうか」とはならないですよね、普通。

欠点は欠点として、やっぱり自分のクルマが一番可愛い。

わたしの場合でいえば、もうちょっと速いほうがいいなとは思うし、「や~、Mr GTVさんの後期もGTAのりさんのGTAも、いいですね~最高ですね~!うらやましいなぁ~」とかいってる言葉にウソはないが、でも、だからといってこの最高の音を捨ててまで後期GTVや156GTAに乗り替えたいとはまったく思わない。そしてMr GTV氏もGTAのり氏も、おそらくは似たようなことを考えているだろう。

「伊達号の音は確かに良かったけど、まぁ総合的にはオレの△△がステキだよね。乗り替えたいとまでは思わないな」と。

これって、何かに似ている。

お子さんがいらっしゃる方は、自分の息子や娘にこういった感情を持つのかもしれないが、不肖伊達には子供がいないため、そのあたりは実感としては不詳だ。でもアレだ、「うちの猫」の話に非常に似ています。「猫と子供を一緒にするなボケ」という人には事前に謝っときますが、とにかく僕ぁうちの猫(♀16歳)が可愛くて可愛くて仕方ない。単なる雑種で、腫瘍の摘出手術で右目は半分の大きさになっちゃってるけど、親バカ全開で言わしてもらえば、こんなに賢くて美人な猫は見たことないよ。猫歴長いわたしからしても。

と、何の話か微妙にわからなくなったが、言いたいことは「(GMブロック世代は別として)アルファはすべて可愛い」ということだ。多少欠点があっても、それを覆すというか気にさせない別の魅力が、特にV6モデルには必ずある。だから前回「試乗対決」をノーコンテストとしたのは、実は苦し紛れのことではなく、この結論を見越してのことだった。

「使用目的」とか、ほんとどうでもいい話ですよ。ワゴンでもクーペでもセダンでもハッチバックでも、なんでもいい。GTVでも156でもGTAでも構わない。何かの縁で非GMブロックのV6アルファと出会ったなら、完調であることを確認するか、もしくは自分の代で完調に戻して、そして付き合っていけば、「あなた+そのクルマ」という組み合わせでしか生まれない何らかのステキな日々が、絶対始まりますから。

「非GMブロックのV6アルファに貴賤なし。いやちょっとあるけど、本人の気の持ちようで貴賤は雲散霧消し、結局は『やっぱうちのコが一番』となる。だから、比較すること自体が無意味!」

これが、長々と引っ張ってしまった『アルファロメオ、漢の対決2011』の最終結論だ。

また結論がグダグダじゃないか、と? いやいや、「やっぱうちのコが一番」と本気で思えるクルマというかブランドってのは、地球広しといえど結構少ないもの。だから、それに値するだけでもV6アルファ全体の大勝利じゃないかと思うので、これでいいのです。


※追記1 とはいえ完調じゃないとすべての話が無意味になるので、定期点検はケチらず受けよう!
※追記2 4気筒ツインスパークも、MTで乗る分にはいいですねー!
※追記3 GMブロックのV6は確かにちょっとアレですが、カタチやオーラ、中古車価格などを含めて総合的に考えると、そんなに悪くない選択だとは思ってます