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中古車ジャーナリストの雑文一式。

君よパ・リーグのようなクルマに乗れ

※2011年7月21日執筆

 

昭和のニッポンに生を受けただけあり、不肖伊達も幼少期においては人並みの野球少年で、地元の少年野球団では不動の控え遊撃手として主にベンチで大活躍した。V9時代の読売巨人軍についてはさすがに記憶に乏しいが、その後の長嶋監督(当時)の解任に際しては、読売新聞の購読解除を両親(当時)に熱く提言したものだ。


しかし高等学校に進んだ頃から自分はベースボールに対する興味を突然失い、爾来ゆるい蹴球ファンとして、FC東京の試合を見に行く、玄関先のPCから巨大掲示板の蹴球板を匿名で荒らすなどして日々を地味に過ごしている。何が言いたいかというと、ベースボールに関する自分の知識は昭和末期の時点でほぼ止まっている、ということだ。

だがここ数年、テレビジョンのニューズ番組等を通じ、あることに気づいてはいた。

なんか、パ・リーグがカッコいい。

野球知識が昭和末期で止まっている自分にとってパ・リーグとは「江川がみっともない駄々をこねてまで行きたがらなかったリーグ」「ガラガラな球場でプレーしてるリーグ」「ライター屋さんがスポンサードしてるチームがあった気がするリーグ」であった。

しかし今、どうであろう。詳しくないのでよくは存じ上げぬが、「だるびっしゅ」なる日ハム投手の、なんと眩しきオーラをまとっていることよ。「ゆうちゃん」と呼ばれる将来を嘱望される若手も、わたしの幼少期であれば「パ・リーグなんて嫌だ。北海道もイナカだから嫌だ。ていうかそもそも『ハム』って響きが嫌だ」などと駄々をこねてドラフト浪人を決め込んでいたはずだが、粛々と北の大地へ行き、そして道民らに愛されているその姿の、なんと清々しいことよ。

そのほかにも、数年前に千葉方面にいた「ばれんたいん」なる監督。今季は不調らしいが、その佇まいに得も言われぬものを感じる「わくい」という投手。「まーくん」なる若手の剛腕。なんだかよくわからぬがベース類を審判に投げつけることで知られる監督など、不肖伊達が素人なりに魅力的だと思う野球人はここ最近、必ず「パ・リーグ所属」だ。

いや、ちょっと自信がないので今ググッてみたところ、「ベースを投げる監督」はどうやらセ・リーグの広島東洋カープで主に活躍したようなので、以下のように言い直そう。

魅力的だと思う野球人はここ最近、必ず「辺境」にいる。

逆に言えば、野球界における問答無用の「中央」である読売巨人軍というチームおよびその配下選手らが今、なんとしょっぱく見えることよ。

や、いまだ読売巨人軍のファンだという人は多いのだろうし、「平成のプロ野球事情を知らぬ者が何を言うか」という批判もあろう。しかし岡目八目っちゅー言葉もあるので敢えて自信をもって言わせていただくが、今、カッコいいのはパ・リーグですよ。日本語としてちょっと変だけど「パであればあるほどカッコいい」と思います。

これはもう「時代の流れ」みたいなもんだから、どうしようもないことなんですね。選手個人のせいではない。先に例として挙げた「だるびっしゅ」さんなどの素晴らしいプレーヤーがパに多いというのも、もちろん大きな理由だろうが、決してそれだけが理由ではない。

マスメディア論とかを大上段に語る知識はあいにく持ち合わせていないが(半端な知識による大上段系を恥ずかしげもなく毎日書ける面の皮の厚さが、自分にもあれば良かったと思わぬでもないが)、フツーに毎日生きてりゃわかりますよ。「中央志向」みたいなモノが完全に時代遅れになってることは。

例えば、こんな(↓)感じで仮想対決をさせるとわかりやすいかと。

「背広姿で都心の大企業に通勤してる人vs.地方の町おこしに尽力してる人」
「在京キー局 vs.ドラゴン前大臣のアレを最初にしっかり放映した地方TV局」
「有名(?)評論家(??)が商業誌に書いてること vs. ちきりん」
「マクドナルド vs. アヒルストア」

お茶の間に対する影響力という点では、上記各項における前者のほうが、まだまだ全然圧倒的な存在です。またマクドナルドとアヒルストア(一部で超絶人気の小規模ワインバー)を対決させるのも、我ながらどうかと思う。が、時代のモメンタムっつーんですか? 勢い? イケてる感じ? みたいなものが間違いなく「後者」に向かってることは、誰の目にも明らかでしょう。

そう考えると、
「読売巨人軍(オーナー=ナベツネ)vs. ○○○○○○○○」
という対決における精神的勝者が、後者の「○○○○」になることは時代の必然なわけです。「○○○○」の中身は「東北楽天イーグルス」でもいいし、「北海道日本ハムファイターズ」でも、パ・リーグならとりあえず何でもいい。中央に近いセ・リーグでも「ヤクルトスワローズ」なんかは、東京という地理的中央にいるくせに妙な辺境感が(昔は)あったので、今は逆に輝いてる気がします。

しかしこれが
「読売巨人軍vs. 阪神タイガース」
になると、なぜか「どっちもどっち」という気がしてくるのはなぜでしょうか。関西の方には申し訳ないですが。


さて、ここまでの素人野球論というか床屋談義みたいなことを長々と書いたのは、以下のひとことを言うためです。

クルマも、トヨタとかベンツとかビーエムとかって、もういいんじゃないですか?

や、それらマニュファクチャラーのクルマの出来が良いことは自分も知ってるつもりだし、人様の買い物にケチをつける野暮な人間にはなりたかないと、常々思ってはいる。

が、野暮を承知で言わせてもらえば、これからわざわざクルマ買うなら、この「時代の流れ」みたいなものに乗っからない手はないんじゃないか、と。

ベンツもビーエムも悪かないですけど、そういったエスタブリッシュメントの権化ではなく、もうちっと辺境というかアウトサイダー的なブランドを選んでみると、ある種の「追い風」に乗ったカラフルな毎日が始まるのではないかと、多少の経験から愚考するのです。


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……という依頼原稿を某自動車誌編集部にイーメールで納品したところ、「最後の数行以外はクルマと何ら関係がない文章である。また前半の『自分語り』も、読者にとっては意味も価値もない。よってこの原稿は掲載できぬ」との旨、編集長直々の返答がきた。平たく言うとボツである。悲しい。ということで商業誌のかわりに拙サイトに掲載した次第だ。もしも最後までお読みいただき、かつ内容を気に入っていただけたなら、お代は結構ですので、道端で不肖私と出会った際、安い席の人は拍手を、高い席の人は宝石をジャラジャラ鳴らしてください。

※上記の破線以降の文章はフィクションです、というかつまらん冗談です