輸入中古車400勝

中古車ジャーナリストの雑文一式。

リセール問題

※2011年5月26日執筆

 

現行メガーヌRSの硬さにはちょっと参ってしまった不肖伊達ですが、同じRSでもルーテシアの現行RSには感動しました! 基本はソフトなのに要所要所で締まる乗り味、エンジンにアルファほどの「わかりやすい刺激」はないけれど、その代わりにあるノルマンディの畑を思わせるような(?)土っぽい滋味。そしてもちろん十分以上の刺激&パワー。ちょっとイナたい感じが逆にうれしい内外装に、ルノーファンにはおなじみの「アンコたっぷり系ファブリック・スポーツシート」。……クルマ単体としては絶対にカイ推奨ですよ。


問題は価格か。この内容で299万円というのは十分「激安!」だし、250万円前後のデモカー落ち中古車もあるから、それを狙えばさらに激安だしね。

だが、新車で総額330万円くらい(たぶん)、デモカー落ち中古車でも総額280万円くらい(おそらく)っつーのは、客観的に言えば前述のとおり「その品質に比して激安!」なわけですが、いち生活者というか零細自営業者の感覚から言うとですね、「…………150万円くらいなら(頑張って)すぐにでもハンコ押すんだが!」なわけです。

しかしこういうことを言うと、「馬鹿かお前は? ヘタなド中古を150万で買ってリセール0円になるより、とりあえず330万円でメーカー保証付きの新車買って、そんでもって数年後に200万円ぐらいで売却したほうが断然トクじゃん。算術もできねえドたわけが」と言う人が必ず出てきます。

私がドたわけであることは別に否定しませんが、「新車購入→リセール期待→また別の新車購入」という一連のフローが本当の意味で「断然トクじゃん」なのかどうか、考えてみましょう。


私が、黄色のルーテシアRSを新車で買ったとします。……そもそも買わないかな? 資金の問題ではなく「リセール観点」で。数年後のルノーの査定額なんてあんま期待できないからね。「フランス車地獄」って言葉もありますし。
それでもまぁ、買ったとします。色は黄色ではなくテッパンの白か。走行距離を年間1万km以内に抑えるのは常識で、できれば5000km/年以下にしたい。それだと査定評価はずいぶん高くなるからね。キズやヘコミも作りたくないから、ドアパンチを予防する意味で、ショッピングセンターとかの駐車場では絶対に角の場所にしか停めません。ちょっと気に入ったサードパーティ製部品を装着したくなっても、絶対にガマン。そんなの付けたら査定ガタ落ちです。「気分変える意味でオールペンでもしてみっか!?」……リセール観点で言えば自殺行為でしょう。

……という具合にさまざまな縛りを設けながら2年か3年乗って、結構な査定額で無事売却できたとします。


私は、本当に「トク」したんでしょうか?


好きな色を選びもせず、いちいち距離を気にして、小キズ発生を極度に避けながらのクルマ生活。そういったせせこましい毎日、自由のない毎日というのは、少なくとも私にとっては大変なストレスであり、人生における多大な「コスト」にほかなりません。

こんなことは照れくさいので今さら言いたかないのですが、それでも勢いで言ってしまうと、クルマっつー物の本質的な魅力とは自由であることです。道と燃料さえあれば、法や良心を犯さない範囲で、いつでも・どこへでも・誰とでも、行ける。その気になれば素っ裸で運転したって構わない。僕ぁやりませんけどね。

そういった自由を手放したうえで、たかがウン万円かウン十万円かの「トク」をして、あなたはいったいどこへ行こうというのか? 何を得ようというのか?

そんな毎日よりも、たとえ査定額0円になってしまったとしても(ルーテシアRSでそれは絶対ないけどね)、中古車と“思うがまま”に暮らす日々のほうが、よっぽど「おトク」なんじゃないかと思うのですよ。人生の総合的なバランスシートで見て。