輸入中古車400勝

中古車ジャーナリストの雑文一式。

良店の共通点は「声が出ている」

※2011年5月25日執筆

 

「最近、このチームはずいぶんと勝ち星を重ねていますが、さもありなんですな。練習を見に行くと、とにかく“声が出ている”んですよ、選手たちの」

ある野球解説者の、今年4月25日の発言である。

というのはまったくの嘘で今テキトーに書いただけだが、たぶん、こんな発言はどこかで実際にされているだろう。あいにく野球については詳しくない私だが、少年時代の記憶によると、強いチームの選手たちは常に「バッチ来い!」「リーリーリー!」などと敵を威嚇するとともに自らを鼓舞し、「ナイスピッチ!」「ナイスキャッチ!」「ナイスバッチ!」と味方を激励し、「マイボール!」と力強くアピールしていた。最後のはサッカーのような気もするが、とにかく、好調なチームは「声が出ている」のだ。

この観点は、輸入中古車購入における「お店選び」にも適用できる。過去十余年にわたる不肖伊達の取材経験によれば、「ナイスな輸入中古車を販売する店」では必ずといって良いほど、スタッフの「声が出ている」。だから、とにかく「声が出ている」か否かで、その店の良否は簡易的に判断できるのだ(あくまで“とりあえずの簡易的判断”ですけどね)。

ここで言う「声」とはすなわち「あいさつ」だ。

店舗入り口の自動ドアを開けた瞬間に、受付担当から「いらっしゃいませ」とくるのはどの店でも同じ。だが店によっては、ちょいとご不浄へ……と私が裏手に行くと、ツナギ姿の整備スタッフからの明るくも力強い「らっしゃいませ!」が。あ、どうもと曖昧に返しつつ用足しを済ませ、再びショールームへ戻る道すがら、誰かからの「いらっしゃいませ(ニコリ)」。こいつは誰だと思いきや、よくよく観察してみれば店の従業員ではなく出入りの業者さん。……という具合に、とにかく「声が出まくっている中古車店」というのが世の中には結構ある。で、そういった店で試乗したり購入した輸入中古車のコンディションは、2011年5月25日現在限定でいえば「ハズレなし」だったのだ。

もちろん、そういったあいさつ攻撃は社長からの「業務指示」なのだろう。「お客様には、バックヤードの者を含め全員があいさつをしなさい」と。だが、全社員の行動を社長が逐一管理することなどできはしない。サボろうとする者は、その気になればいくらでもサボれるものだ。社長や上司が見ていない局面では。

にもかかわらず、来客に常にビシビシあいさつし続けるスタッフらの心もちとは、いったい何であるだろうか。

「主体性をもって仕事をしている」
「店の経営を、他人事ではなく“自分事”としてとらえている」
「自らの仕事を愛している」
「自らの仕事に誇りをもっている」
「この職場が好きだ!」
「クルマが好きだ!」
「リスペクトだぜ、社長!」
「成績上げれば給料も上がるからね!」

さまざま考えられるが、仮にその中のどれであったとしても、そういった感情をもっている人間が仕入れ・整備し・陳列する中古車のコンディションが良好なものとなるのは、物の道理なのである。